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デジタルトランスフォーメーションが解決する廃棄物業務管理

デジタルトランスフォーメーションが解決する廃棄物業務管理

 

 

『INDUST』2023年7月号に、弊社取締役COO&CFO 城野 洋一が寄稿いたしました。
以下にその記事を掲載いたします。

出典:https://www.zensanpairen.or.jp/


事業活動を行えば、それに伴う廃棄物が出ることはおよそ避けられない。生じた廃棄物は、事業系一般廃棄物や産業廃棄物としてそれぞれに責任ある処理が必要である。違反すれば罰則が科せられることはもちろん、事業者としての信用を大きく失うことにもつながりかねない。企業にとって、人々が安心・安全に暮らせる生活環境をともに作り、維持していく面でも、産業廃棄物の処理は重要な責務である。

企業における廃棄物管理業務の課題

廃棄物処理に伴う管理業務において、企業が取り組む際に考えられる課題には、以下のようなものがある。

(1)法令遵守

まずは法令遵守の徹底があげられる。廃棄物管理には、国や地域ごとに異なる法規制が存在し、企業は、廃棄物の分類、処理方法、運搬手続きなど、様々な法規制を遵守する必要がある、廃棄物管理に関する法規制は定期的に変更されることがあり、新しい法律や規制の導入、既存の規制の改正に迅速かつ適切に対応することも法令遵守の課題となる。
また、廃棄物管理には、許認可や申請手続きが必要な場合があり、企業は、廃棄物処理施設の設置、廃棄物の輸送許可、環境影響評価などの手続きを適切に行う必要がある。この申請書類の作成や提出には時間と労力がかかり、正確性と完全性が求められ、無知によるミスも許されない。
さらに法令遵守は自社に留まらず、企業のサプライチェーン全体にわたって行われるべきである。廃棄物の処理や運搬を担当するサプライヤーや請負業者も、適切な法令遵守を行う必要があり、企業はサプライヤーや請負業者の選定や監査を行い、適切な取り組みを促進するためのコミュニケーションと協力体制を確立せねばならない。

(2)書類管理

次に、膨大な書類の管理がある。廃棄物処理法には、廃棄物の発生、処理、運搬、保管などに関する様々な規制が含まれている。企業は廃棄物に関連する多くの書類を作成し、保管し、法的要件に準拠するために、膨大な量の書類を作成・整理する必要がある。また書類の保管期間も定められているため、スペースの問題や、データ管理の問題を引き起こす可能性がある。
さらに、書類管理が煩雑になると、必要な情報を迅速に見つけることが難しくなる。法的要件や監査などで特定の書類が必要になった場合、効率的な追跡と検索の仕組みが必要で、手作業での書類の整理やラベリングでは、追跡や検索に時間とリソースを多く費やすことになる。

(3)コスト管理と経済効率性

廃棄物処理には、廃棄物の収集、運搬、処理、最終処分などに関わるコストがかかるため、企業はこれらのコストを最小化するために努力せねばならない。廃棄物を効率的に分別し、再利用やリサイクルの取り組みを行うことで、処理コストを削減でき、また、適切な廃棄物処理業者や施設との契約交渉や価格比較も重要となる。
また、廃棄物には再利用やリサイクルによって得られる潜在的な価値があるため、企業は廃棄物を資源として捉え、有効に活用することで経済効率性を高める必要がある。例えば、廃棄物から再生可能エネルギーを生み出すバイオガスプロジェクトや廃棄物からの原材料の再利用などがあり、これらにより、廃棄物管理のコストを削減し、新たな収益源を確保することができる。

(4)社会的責任の遂行

昨今、特に重要視される課題として企業の社会的責任の遂行がある。
各企業が単独で求められる対応としては、基本的に廃棄物の発生量を最小限に抑えることから始まり、省エネルギーや資源効率の向上、廃棄物のリサイクルや再利用の促進、廃棄物を発生させないような製品設計や購買戦略の見直しなどがある。
また、廃棄物の適切な処理や廃棄物処理施設の選定、見直しにより、環境への悪影響を最小化することも重要である。廃棄物の排出や漏洩による土壌や水質の汚染、大気への排出による大気汚染などへの対策を講じることはもとより、廃棄物のリサイクルやエネルギー回収などの持続可能な処理方法の選択も重要な要素となる。
さらに今後は各企業単体での対応に加え、資源循環率向上を目指すための、地域との連携とコミュニケーションが不可欠だ。企業は地域の関係者との協力し、企業単体では実現困難な廃棄物の資源化を、地域企業との連携により推進する必要がある。
最後に、企業の廃棄物管理活動に関する透明な報告と責任の追跡も非常に重要だ。企業は廃棄物管理の成果や取り組みを公開し、定期的な報告や透明性のある情報開示を行うことで、社会への責任を明確に示すことが出来る。また、外部の監査や評価機関による検証も行い、報告内容の信頼性を確保することが求められる。
このように企業の社会的責任の達成は、環境保護や持続可能な発展に寄与し、企業の信頼性や競争力を向上させる重要な要素となる。

デジタルフォーメーションによる解決策

このように廃棄物処理に伴う企業の管理活動には、法令遵守、書類管理、コスト効率性の確保が基本的な課題として存在する。さらに、最近では地球環境問題の深刻化から社会的責任の遂行、循環型社会への貢献が求められており、これらの課題への適切な対応は、企業活動にとって極めて重要である。
廃棄物処理に伴う企業の管理活動

一方これらの課題に対する企業の取り組みについて考察すると、一部の先進的な企業を除いては、他の企業課題との比較において、経営者の意識がまだそれほど高まっていないという現実がある。その結果、社内リソースが十分配分されておらず、まだ必要な対応が取られていない企業も多い。
このような状況から、デジタルトランスフォーメーション(DX)が、有効な解決策の一つとなると考えられる。
企業における廃棄物管理のDXは、従来の廃棄物管理プロセスをデジタル技術の活用により変革することを指す。
企業は廃棄物の発生から廃棄物の処理手続き、報告、集計までの業務フローを一気通貫でデジタル管理することによって、廃棄物の種類や量を追跡し、データを分析して効率的な廃棄物管理戦略を策定することが可能となる。
具体的には、廃棄物管理のDXによって、企業は以下のような利点を享受することができる。

(1)コンプライアンスの向上

システムにより、廃棄物管理に関連する法的要件や規制情報を管理し、デジタル化された業務プロセスと照らし合わせることによって、業務内容を自動的に監視し、遵守の支援が可能となる。また、デジタルツールにより、特定の規制に基づいて必要な手順や文書の作成、報告書の生成、期限の追跡などを自動化することができ、廃棄物の正確な追跡と文書化が可能となる。
このようなアプローチにより、企業は遵守プロセスを、システムにより簡素化することができ、同時に遵法性を確保しながら、人的工数を軽減することができる。

(2)書類管理の効率化・データ分析

電子文書管理システムやクラウドベースのドキュメント管理システムを導入することにより、廃棄物に関連する書類やデータを電子化し、容易に検索、共有、保存できるようになる。また、手作業によるヒューマンエラーや遅延が減少し、生産性が向上する。
さらに、システム化により廃棄物の量や傾向、パターン、廃棄物処理コストなどのデータ収集、分析が容易となると共に、将来の発生量や処理方法に関する予測が可能となる。蓄積されたデータを活用することによって、企業は廃棄物管理の課題や改善のポイントを特定し、適切なリソースの配分や効果的な計画立案を策定することができる。

(3)コスト削減

改めて言うまでもなく、システム化により、廃棄物管理プロセスの手作業やエラーを削減できる。また、データの見える化、分析によって、廃棄物の処理やリサイクルにかかるコストの見直しを行うことができ、また、予防保全や最適化による廃棄物の発生量の削減も可能となる。
さらに、地域企業との連携によりリサイクル率の向上が期待でき、廃棄物の資源化によるコスト削減、ひいては収益化の可能性も生まれる。

(4)企業の社会的責任の追求

DX化により、廃棄物のデータを収集、分析し、廃棄物の追跡や分析が容易となり、廃棄物の発生源や処理過程において環境への負荷を減らすための改善策を見つけることできる。また、収集したデータを分析することにより、廃棄物の削減やリサイクル率の向上などの持続可能な廃棄物管理戦略を策定し、企業は社会的責任を果たすための具体的なアクションに移ることが出来る。さらに、透明性を確保するために、企業はデジタルツールを活用してステークホルダーとの情報共有やコミュニケーションを強化することも出来る。
このように、廃棄物管理のDXは、従来の手動プロセスからデジタルツールとシステムを活用することで、法的コンプライアンスの向上、効率性の向上、コスト削減、環境負荷の軽減、地域資源循環率向上への貢献などのメリットをもたらす。企業はデジタル技術を積極的に導入することで、持続可能な廃棄物管理戦略を実現し、ビジネスの競争力を強化することができる。

終わりに

廃棄物管理のDXは、技術の進歩と環境意識の高まりが相まって、廃棄物処理の方法やプロセスに革新をもたらす可能性がある。
また、AI革命の波は既に進行中であり、廃棄物管理業務にも到達しつつある。この波の進展により、廃棄物管理プロセスはさらに自動化、最適化が図られ、廃棄物の分別や仕分け、最適な処理方法の選択、実行といったタスクを効率的に実行できる世界が間違いなく到来すると考えられる。
DXは唯一の解決策ではないが、それにより私たちに新たな可能性を提供し、持続可能な廃棄物管理の実現に向けた努力を加速させることができる。私達には、技術の力を借りつつ、環境への負荷を減らし、資源の効果的な利用を追求するという使命が課せられている。
廃棄物管理に関するシステムは従来から存在しているが、昨今ようやく管理業務の効率化にとどまらず、データ活用を強く意識し、他業界では当たり前となってユーザビリティを追求したクラウドサービスが出てきている。 当社はその中の1社であるが、本文をきっかけに是非未来の持続可能な廃棄物管理に向けて進むため、廃棄物管理のDX化の検討を進めていただけると幸いである。

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