事業活動で発生する廃棄物を4つに分けてわかりやすく解説!

事業活動では、規模の大小にかかわらず必ず廃棄物が発生します。
廃棄物は法律によって細かく分類され、年々規制も強化されています。もし事業者がその内容を正しく理解していなければ、誤った処理によって法的な処罰を受ける可能性があります。そのような万が一の事態を避け、事業活動を円滑に続けていくためにも、廃棄物処理の基本となる「分類」を理解することが大切です。以下にその概要をまとめましたので、ぜひご参考ください。
廃棄物とは
前提として、ここでいう廃棄物とは、燃え殻や汚泥、その他汚物等や不要物で、かつ気体以外の固形または液体状のものを指します。なお、港湾や河川などの浚渫に伴って発生する土砂、漁網にかかった水産動植物およびその排出物、そして通常の土砂については、廃棄物処理法上の「廃棄物」には含まれません。(ただし、汚染の有無や自治体の条例によっては規制対象となる場合もあります。)
廃棄物は大きく「産業廃棄物」と「一般廃棄物」に分けられ、その下にさらに細かな区分が存在します。ここでは、事業活動に伴って排出される廃棄物の分類について詳しく見ていきましょう。
産業廃棄物の種類
まず、産業廃棄物とは「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に規定された20種類の廃棄物をいいます。
名称 | 対象物 |
---|---|
燃え殻 | 焼却炉の残灰などの焼却かす |
汚泥 | 製紙スラッジ、下水汚泥、活性汚泥、凝集沈殿汚泥、めっき汚泥などの無機性汚泥 |
廃油 | 潤滑油、絶縁油、洗浄用油、切削油、タールピッチなどの鉱物性油、および動植物性油脂の廃油 |
廃酸 | 廃硫酸、廃塩酸などの酸性廃液 |
廃アルカリ | 廃金属せっけん液、廃写真現像液などのアルカリ性廃液 |
廃プラスチック | 合成樹脂くず、合成繊維くずなどの固形状および液状の合成高分子系化合物 |
紙くず | 建設業、製糸業、パルプ・紙加工品製造業、出版業などから生じた紙くず |
木くず | 建設業、木材・木製品製造業、パルプ製造業などで発生した木くず、流通用パレットに係る木くず |
繊維くず | 建設業、繊維業から生じた天然繊維くずが含まれるもの |
動植物性残さ | 食料品製造業、医薬品製造業などで原料として使用した動植物性残さ |
動物系固形不要物 | 畜場や食鳥処理場で家畜の解体などで発生した固形不要物 |
ゴムくず | 天然ゴムくず |
金属くず | 鉄鋼または非鉄金属の研磨くず、切削くずなど |
ガラスくず・コンクリートくず | ガラス製品製造過程で発生したガラスくず、コンクリートくず、陶磁器くず、廃石膏ボードなど |
鉱さい | 高炉、平炉などの鉱さい、不良鉱石、不良石炭など |
がれき類 | 工作物の新築、改装、撤去で発生したコンクリート破片やその他の不要物 |
動物のふん尿 | 畜産農業で発生した牛、馬、豚などのふん尿 |
動物の死体 | 畜産農業で発生した牛、馬、豚などの死体 |
ばいじん | ばい煙発生施設等で発生したばいじん、集じん施設により集められたもの |
処理済廃棄物 | 1~19の産業廃棄物の処分のために処理したもので、1~19に該当しないもの(事業系一般廃棄物以外) |
特別管理産業廃棄物の種類
次に、上で挙げた中でも爆発性、毒性、感染症、その他の人の健康または生活環境に係る被害を生ずる可能性のある産業廃棄物については、別途「特別管理産業廃棄物」という区分となり、厳しい規制が設けられています。
特別管理産業廃棄物の対象となるものは、下表のとおりです。
名称 | 対象物 |
---|---|
廃油 | 揮発性油、灯油、軽油 |
廃酸 | 腐食性が強い pH2.0 以下の廃酸 |
廃アルカリ | 腐食性が強い pH12.5 以上の廃アルカリ |
感染性産業廃棄物 | 医療機関などから排出される産業廃棄物で、感染性病原体が含まれる、または付着しているおそれのあるもの |
廃PCB等 | PCBを含む廃油 |
PCB汚染物 | PCBが染み込んだ汚泥、紙くず、木くず、繊維くず、PCBが付着又は封入されたプラスチック類、PCBが付着した陶磁器やがれき類 |
PCB処理物 | 廃PCBなど、PCB汚染物を処理した後で、なおPCBを含むもの |
廃水銀等 | 特定の施設で生じた廃水銀等、水銀若しくはその化合物を含む産業廃棄物、または廃棄した製品から回収した廃水銀 |
指定下水汚泥 | 下水道法施行令第13条の4の規定により指定された汚泥 |
鉱さい | 一定濃度を超えた重金属を含むもの |
廃石綿等 | 石綿建材除去事業に係るもの、または大気汚染防止法の粉じん発生施設を設置している事業場から発生したもので飛散する可能性のあるもの |
燃え殻 | 一定濃度を超える有害物質(鉛、カドミウム、六価クロム、砒素、シアン、水銀、農薬、有機塩素化合物、1,4-ジオキサン、ダイオキシン類等)を含むもの。 |
ばいじん | 一定濃度を超える有害物質(上記と同様)を含むもの。 |
廃油(有機塩素化合物等含有) | 有機塩素化合物等や1,4-ジオキサン、ダイオキシン類など、有害物質を一定濃度以上含むもの。 |
汚泥、廃酸又は廃アルカリ | 重金属、農薬、有機塩素化合物、1,4-ジオキサン、ダイオキシン類など、有害物質を一定濃度以上含むもの。 |
事業系一般廃棄物の種類
事業系一般廃棄物とは、事業活動から排出される廃棄物のうち、法令で定められた20種類の産業廃棄物に該当しないものを指します。
例えば、
- レストランや飲食店で出る残飯類や野菜くず
- オフィスで使われたコピー用紙や段ボールなどの紙類
- 店舗から排出される食品くずや包装材
- 事務所で従業員が利用したプラスチック容器や金属缶
といったものは事業系一般廃棄物にあたります。
ただし注意が必要なのは、紙くずや木くず、動植物性残さなどは特定業種から排出された場合には産業廃棄物扱いとなる点です。つまり、同じ「紙くず」でも、オフィス由来であれば事業系一般廃棄物、建設業由来であれば産業廃棄物、と扱いが変わります。
特別管理一般廃棄物の種類
一般廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染症その他の人の健康または生活環境に被害を生じる可能性のある廃棄物は「特別管理一般廃棄物」に該当します。
特別管理一般廃棄物は下表のとおりです。
名称 | 対象物 |
---|---|
PCBを含んだ使用部品 | 廃棄したエアコン・テレビ・電子レンジに使用している部品にPCBが含まれているもの |
廃水銀 | 廃棄した水銀使用製品から回収した廃水銀 |
ばいじん | ごみ処理施設の集じん設備で発生したばいじん |
ばいじん、燃えがら、汚泥 | ダイオキシン特措法の特定施設である廃棄物焼却炉から生じたもので、3ng/gを超えるダイオキシンが含まれるもの |
感染性一般廃棄物 |
医療機関などで発生する廃棄物であり、感染症病原体が含まれる、または付着しているおそれがあるもの |
リサイクル法対象の廃棄物
ここまで挙げた分類に加えて、いくつかの廃棄物はリサイクル法にも準じた処理を行う必要があります。
これは資源や廃棄物などの分別回収や再資源化、再利用について定めた法律で、対象の種類ごとに個別に制定されています。
名称 | 対象物 |
---|---|
容器包装リサイクル法 | 缶・びん・PETボトル・紙製容器包装など |
家電リサイクル法 | 家庭用のエアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機 |
食品リサイクル法 | 食品の製造業や小売業から出たくず・食品の売れ残り・食べ残し |
建設リサイクル法 | コンクリート・コンクリート及び鉄から成る建設資材・木材・アスファルト・コンクリート |
例えば、家庭用のエアコンやテレビの処理方法を定めた家電リサイクル法は、家庭だけでなくオフィスから排出された場合も対象となるため、理解しておく必要があるでしょう。
まとめ
事業活動では必ず廃棄物が発生するため、適切に保管、処理しないと事業者の責務を問われることもあります。円滑に事業を行うためには、廃棄物の適切な管理ならびに処理が大切です。
廃棄物の種別の判断が困難な場合は、事業者が勝手に判断せず、必ず自治体へ確認しましょう。特に新たな事業活動を展開する場合は、それに伴いこれまで扱ったことのない廃棄物が発生することも考えられます。
法律上の区分を十分に理解した上で、廃棄物の適切な保管・処理に努めましょう。
産業廃棄物と事業系一般廃棄物の違いを簡単にポイントで整理したい方はこちら