POCで終わらせない!資源循環システムの「現場主義」
深刻化する環境問題とサーキュラーエコノミーへの必然的な移行
現代社会は、大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済システムを長らく続けてきました。その結果、資源の枯渇、気候変動、廃棄物処理場の逼迫など、地球環境問題は益々深刻化しています。
この背景から、資源を循環させ、経済的な価値を維持し続けるサーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行は、もはや社会的な必然となっています。多くの国や企業がこの変革を目指し、様々なプロジェクトを立ち上げています。
POCで停滞する資源循環プラットフォームの現状
近年、持続可能な社会への貢献を目指し、「資源循環プラットフォーム」「サーキュラーエコノミーシステム」の構築を掲げる企業やプロジェクトが数多く立ち上がっています。
しかし、その多くは概念実証(Proof of Concept: POC)の段階で足踏みし、社会実装に至るケースはごくわずかです。
なぜ、壮大なビジョンや最新テクノロジーを掲げながら、一歩先に進めないのでしょうか。
スケールを阻む要因:「付加価値の高い個別資源」を狙うビジネスの限界
POC止まりの取り組みの大きな特徴として、「付加価値の高い個別資源だけを対象とするモデル」があります。
たとえば、「異物の混入が極めて少なく、純度が高い特定の素材」など、最初から経済的なメリットが見込みやすい資源をターゲットにし、高純度のリサイクル品を生み出すといった事例です。これは個別の実証としては成功しますが、事業を拡大する段階で、スケールアップの壁に直面し、持続的な成功が困難になるケースが多く見られます。なぜなら、付加価値の高い個別資源は全体の排出量から見ればごく一部であり、事業をスケールさせようとすると質や量の確保が途端に困難になるからです。
そもそも、容易に回収・再生できるものだけを拾い集める行為は、「資源循環システム」というより、限定された市場を狙う「選択的なビジネス」に過ぎません。
資源循環の本丸は、「多くが捨てられている程度の品質の、厄介なごみをどう扱うか」にあります。社会全体に広く存在する、複雑に混ざり合い、汚染度が高い廃棄物を経済合理性を持って処理し、再生させる仕組みこそが、真の循環システムです。
「あるべき論」ではなく「廃棄物起点」の現場主義へ
このスケールアップの課題の根源にあるのが、現場の実態を見ていない「あるべき論」です。私たちは、
- いつ、だれが、どこで、どのようなゴミをどれだけ出し、
- いつ、だれが、どこで、どのような処理をしているのか?
という、「生きた廃棄物情報」すら把握できていないのが現状です。この情報のブラックボックスこそが、社会実装を阻む最大の要因なのです。
資源循環のシステムを真に機能させるためには、思考の起点を「理想」ではなく「現実の廃棄物」に置き、「現場主義」を徹底することが不可欠です。
まずは、実際に出ている廃棄物を起点に、以下の現場情報を徹底的に把握し、システム設計の土台とすべきです。
- 何が出ているか: 実際に出ている廃棄物の種類、性状(混ざり具合、汚染度)。
- どれだけ出ているか: 発生量(量と頻度)。
- どう出ているか: 現場での分別方法、排出事業者や回収業者のオペレーション。
システムは、「手持ちの情報で、今そこにある廃棄物を、どうすれば最も効率的かつ経済的に次の資源ルートに乗せられるか」という視点から、現状のオペレーションを改善・最適化する形で方向性を導き出し、構築されるべきです。
先端技術はシステムの土台ができてから
AIやIoT、ブロックチェーン等の先端技術は、トレーサビリティやデータの信頼性向上、自動化といった面で、将来的に大いに役立つポテンシャルを秘めていますが、それらはあくまで効率化・高度化のためのツールです。
土台(現場情報)の整備なくして、その上に高度な技術を載せても機能しません。まずは「生きた廃棄物情報」を地道に収集・整理し、資源循環の「流れ」を定義し、情報の「見える化」と「共有」の仕組みを構築することに注力すべきです。先端技術の活用は、この土台が整い、情報が流れ始めた次のフェーズで検討すれば十分です。
廃棄物を起点に、現場の実態を踏まえて検討する。
この一歩一歩のStepを踏むことこそが、理念先行のPOCで終わらせず、持続可能で経済的にも成立する資源循環システムを社会に実装するための、最も重要な道筋です。
終わりに
このコラムで述べたように、資源循環システム構築には「現場情報の把握」が不可欠です。当社では、廃棄物関連業務をDX化し、現場で発生する廃棄物情報を効率的に集計・可視化するためのクラウドサービスを提供しております。社会実装に向けた最初の一歩を踏み出すために、ご興味のある方はぜひお問い合わせください。