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廃棄物排出事業者が知っておきたいESG経営とは?

廃棄物排出事業者が知っておきたいESG経営とは?

ESG経営は廃棄物を排出する事業者であれば取り入れなければいけない課題です。ESG経営は環境・社会および企業統治の3つの要素を考慮した経営方法であり、利益や効率を最優先してきた従来の考え方とはまったく異なる経営手法です。

排出事業者としても、環境問題への配慮はもちろんですが、社会貢献や企業統治の観点からも新しく考え直すきっかけになり得ます。また、ESG経営の導入は、将来的な企業イメージアップやキャッシュフローの増強につながります。

本記事では、ESG経営が重要視されている背景を解説し、取り入れ方や、実際に活用している企業の例を紹介します。

ESG経営が重要視されている理由は?

VUCA(ブーカ)時代である現代社会において、中長期的な持続性に注目したESG経営が重要視されるようになりました。

VUCAとは、1990年代の軍事用語で2010年代からビジネスシーンでも使われるようになった用語です。Volatility「変動性」、Uncertainty「不確実性」、Complexity「複雑性」、Ambiguity「曖昧性」の4つの単語の頭文字を合わせた言葉です。

AIのようなテクノロジーの技術促進による変動制、未知のウイルスや温暖化など地球規模で起こる不確実性、ビジネスのグローバル化による複雑性、そしてそれら全てが合わさることによる曖昧性により、先行きの見通しが難しくなった現代社会を表した言葉です。

VUCA時代への対応としてESG経営は、次の3つの理由から重要視されています。

・投資家からの評価の向上
・企業のイメージアップ
・ガバナンス強化による経営リスクヘッジ

このような背景から廃棄物を排出する事業者は、ESG経営を取り入れていくことには大きなメリットがあると考えられます。

投資家からの評価の向上

今や世界規模での投資トレンドとしてESG投資があります。ESG投資とは、環境・社会・企業統治の観点を取り入れている企業を選定して行う投資であり、該当する企業の投資家からの評価が上がります。

世界最大の公的年金基金であるGPIFでも、ESG経営を取り入れている企業の持続的な成長を評価し、ESG投資を推進することを表明しました。

これらの要因により、世界の投資マネーがESG経営の企業へ流れてくることになります。結果として、キャッシュフローの増強につながるため企業成長の糧とすることができます。

企業のイメージアップ

ESG経営は、社会問題や環境問題へ積極的に取り組んでいくことへの表明にもなります。利益を最優先とする企業と比べて、世間的なイメージは良くなります。

イメージが良い企業であれば、取引先に対してもポジティブな印象を与えることができ、事業の拡大へと繋げることができます。企業イメージアップにより商品やサービスの信頼も上がるため、最終的には利益に還元されるメリットを享受できる点も見逃せません。

ガバナンス強化による経営リスクヘッジ

ESG経営は、要素の1つでもある「ガバナンス(企業統治)」に対して取り組む必要がありますが、ガバナンスの強化によって経営リスクのヘッジとなりえます。

企業統治とは、社外取締役、社外監査役のように社外から経営を監視することにより統治することを指します。組織全体としての不正や不祥事を防ぐ効果があるため、経営者による不正行為のリスクを避けることができます。

また、作業工程などにおいては、第三者の監査がはいるため、利益最優先で安全性の担保がされないようなリスクのある工程なども改善されます。

利益だけを重視するような経営方針では、商品やサービスの安全性などの低下に繋がり将来的な問題へと発展する可能性もあります。リスク未然に防ぎ持続的な排出事業者として成長することができます。

ESG経営を取り入れるにはどうする?

ここからは、ESG経営を取り入れる際のポイントを解説します。ESG経営の概念の理解や長期的な見通しが重要なポイントです。

ESG経営を取り入れる際のポイント

次の2つの手法がESG経営の導入において重要なポイントです。

・バックキャスティング手法
・シナリオ分析手法

バックキャスティング手法は、先行きの見通しが立ちにくい将来に対して、目標を定める場合に有効な手法です。将来の目標や在るべき姿から逆算して現在の行動指針を考える手法で、2015年のパリ協定で2030年に向けた世界共通の目標が設定されてから注目が集まりました。

一方、シナリオ分析は、気候変動のように長期的でかつ不確実要素の多い目標に対して実施する手法です。様々な条件のシナリオを用意し、事業計画に柔軟性を持たせる特徴を持ちます。

例えば、気候変動の場合は気温が1.5度上昇した場合や2度上昇した場合など、複数パターンを想定し、それぞれのパターンにおけるリスクや影響を検討します。

もう一つの重要なポイントとして、サステナビリティの強化が挙げられます。サステナビリティは直訳すると「持続可能性」ですが、SDGsの概念では環境問題と経済活動を両立することによる持続的な社会活動を指します。

環境問題への取り組みはESG経営の基礎でもあり、企業のイメージアップや投資家からの評価向上などのメリットに繋がる重要な活動ポイントです。

最後に紹介するポイントは「社会貢献活動への取り組み」の導入です。こちらもESG経営の要素のひとつsocial(社会)に該当します。社会貢献活動への取り組みとしては様々なものがありますが、「ダイバーシティ(多様性)」や「労働環境の改善」などが代表的なものとして挙げられます。

ESG経営を取り入れる際の注意点

排出事業者のESG経営導入の担当が注意しなければいけないこととして、ESG経営は従来の経営に追加するものではないという点があります。これまで排出事業者が事業を通して社会に対して貢献する場合は、製品やサービスなど機能的な価値を提供することを求められました。

しかし、ESG経営の概念を取り入れるのであれば、社会貢献や環境問題の解決など社会的価値を提供するように変えていかなければなりません。排出事業者としての理念を利益第一の機能的価値提供から、社会的価値へシフトしていくことを考える必要があります。

また、ESG経営の導入はすぐには結果が出ません。例えば、環境問題の解決などは長い年月をかけてようやく効果が見えてくるものであり、短期的な効果はあまり期待できません。そのため、中長期的な視点をもって計画的にESG経営導入に取り組む必要があります。

ESG経営の企業例とは

今回はESG経営を導入した企業の例として、2つの国内企業を紹介します。
・AGC株式会社
・花王株式会社

AGC株式会社

AGC株式会社はサステナビリティ経営を打ち出し、社会的価値の創出を宣言しています。2050年までにカーボン・ネットゼロを目指すとして環境問題への取り組みを行ったり、労働環境の改善の一貫で、ダイバーシティの価値観を尊重し性別・年齢・国籍を問わず活躍できる職場環境を構築したりしています。

2020年には職場における女性の活躍を推進したことを評価され、経済産業省から「なでしこ銘柄」に選定されています。また、ESGインデックスファンドに組み込まれるなど、機関投資家からのESG評価も高い企業です。

花王株式会社

創業当初から環境に配慮した材質を利用したり、ボトルにきざみをつけることで目の不自由な方にも使いやすいデザインとしたり、積極的な取り組みを見せる花王株式会社。2009年には「環境宣言」として環境に配慮した取り組みを推進するなど、ESG経営の要素を以前から持ち合わせた企業でした。

2019年にESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を発表し、より強くESGの概念に沿った企業理念へとアップデートします。さらに2021年には「OKR制度」というESGの要素を含んだ新評価制度を開始し、役員を含めた全員がESG目標を設定しています。

上記の実績から、ESG経営を根幹から取り入れることに成功している企業といえるでしょう。

まとめ

今回の記事では、下記について解説しました。

・ESG経営が重要視されている理由は?
・ESG経営を取り入れるにはどうする?
・ESG経営の企業例とは

ESG経営を取り入れることによって、投資家や顧客からの評価が上がりキャッシュフロー増強に繋がります。また、企業統治をみなおし第三者視点で経営を導くことが出来るため、不正などのリスクを軽減できます。

世界全体としてのSDGsへの取り組みなどもあるように、環境問題や社会貢献はこれからの排出事業者にとっても大きな課題となりえます。今回紹介した導入企業の例などを参考に、ぜひESG経営導入を前向きに検討していきましょう。