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“廃棄物を見える化する”という挑戦 ― CLO講座登壇で説いたサーキュラーエコノミーへの運用転換

“廃棄物を見える化する”という挑戦 ― CLO講座登壇で説いたサーキュラーエコノミーへの運用転換

講座登壇のご報告

先日、物流・サプライチェーンを担当される企業の方々を対象とした CLO(Chief Logistics Officer)養成講座 において、当社代表が「廃棄物データ活用によるサーキュラーエコノミーの可能性」というテーマで登壇する機会をいただきました。
参加者には、拠点を多数持つ小売企業や、物流・製造拠点を複数運営される企業のご担当者が多く、日々の現場運営における課題と結びつけながら講義に耳を傾けていただけたように感じます。

ここでは、講義の内容を整理しつつ、「拠点を多く持つ企業だからこそ取り組むべき廃棄物データ活用の意義」と「サーキュラーエコノミーへの第一歩」を中心に紹介します。

サーキュラーエコノミーと「規格」の潮流

近年、従来の線形経済(資源取得→製造→流通→消費→廃棄)から、資源の価値を可能な限り循環させる サーキュラーエコノミー(循環型経済) への移行の機運が高まっています。
この流れの中で、気候変動においてGHGプロトコルが策定されたように、資源循環においてもGlobal Circularity Protocol (GCP)という枠組みが策定されつつあります。これまで曖昧だった循環性の定量化指標を整えることで、測定や目標設定、開示などの取り組みの必要性が高まってきたことは自明です。

廃棄物データを起点とした設計の意義

講義では、廃棄物を単に「捨てるもの」と捉えるのではなく、次の改善や循環設計の出発点となるデータとして捉える視点を紹介しました。

廃棄物は“外れもの”ではない

サーキュラーエコノミーの設計では、シェアや再利用、再販売などのループが注目されがちで、「廃棄=ループから外れたもの」と見なされることがあります。しかし、廃棄そのものは どの資源がどの拠点で滞留したか、あるいは逸出したかを示すデータ であり、次の循環設計を考えるための重要な出発点です。
拠点を多く持つ企業では、廃棄物量や処分コスト、運搬頻度、返品率、ロス率などを拠点別・品目別・時間別に可視化することが、運用最適化やコスト削減の第一歩になります。

なぜ「データの正確性」に不安が残るのか

日本の廃棄物処理産業は、市場規模で約5.3兆円にのぼり、収集運搬と処理費がそれぞれ半分ずつを占めるとされています。
これほど大きな経済活動でありながら、データ活用や標準化が進んでいない領域でもあります。最終的な報告を処理業者に委ねる構造のなかで、情報の粒度や更新頻度には差が生じがちです。多数の事業者が参入し地域完結型で運営される業界構造のため、正確な廃棄物データが排出した企業側に届きにくく、拠点運営の改善や資源の循環設計に十分活かせていない実態があります。
逆に言えば、可視化可能なデータ基盤を構築できる企業には、大きな改善と成長の余地がある ということでもあります。

拠点を多く持つ企業が直面する“現場最適から全体最適へ”の転換

廃棄物管理を含む拠点運営は、多くの企業で「現場最適(それぞれの拠点で最善を尽くす)」という運用が長くなされてきました。ただし、サーキュラーエコノミーの要請や、GCPのような国際的フレームワークを背景に、「現場ごとに最適化された仕組み」が“企業グループ/ネットワーク全体”として最適化されているかという視点が今、問われていると思います。
具体的には、「廃棄物データを拠点横断で集め、標準化し、価値の流れとして設計する」ことが必要です。そうでなければ、見えないムダや価値逸出が放置され、資源効率・コスト効率・環境対応などの観点で機会損失になります。
この転換には、情報システム(共通の軸を持つプラットフォーム)を構築することが第一歩です。そして、蓄積されたデータベースをもとに、製造や物流といった“動脈”都の流れをつなぎなおし、地域を巻き込んだ共同回収などのネットワークを作ることが、サーキュラーエコノミーへの鍵だと考えています。

本コラムが問いかけること

最後に、拠点を多く持つ企業の皆さまに問いかけたいのは次の視点です。

  • 廃棄物や返品、ロスを「発生したあと片付けるもの」としてのみ扱っていませんか?
  • 拠点別・品目別・時間別で「どのくらい廃棄しているか」「なぜ廃棄しているか」を可視化していますか?
  • 廃棄物の裏側にある在庫・発注・配送・返品・保管の流れを捉え、資源をいかに価値あるまま循環させるかを設計していますか?

こうした問いに自信をもって答えられる企業は、資源効率競争で優位に立つことができるでしょう。
一方で、「どこから着手すべきか分からない」「拠点が多く手が回らない」と感じる企業にとっては、今こそアクションの始め時です。

終わりに

今回のCLO講座登壇では改めて廃棄物管理はバックヤードのコスト項目ではなく、拠点を多く持つ企業の次の価値創造を支えるデータ資源 であるということをお話しさせていただきました。
小売、物量業界に限らず、複数拠点を運営する企業において、廃棄物データを中心に据え、資源流れを設計する視点を取り入れることは、経営の意思決定や運用改善、さらにはサーキュラーエコノミーへの移行にもつながります。
自社の廃棄物データをどう活用できるか、今一度考えるきっかけになれば幸いです

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