
はじめに
企業における廃棄物管理システムは、今や業務の基盤として欠かせない存在です。マニフェストの発行・トレースを効率化し、法令遵守を支える仕組みとして10数年前から大手製造業を中心に導入が進みました。当時は、不法投棄防止を目的に廃棄物処理法が整備され、「排出者責任」という言葉が広く知られるようになった時代。紙で行われていたマニフェストを電子化し、確実かつ効率的に管理できることは大きな進歩であり、リーディングカンパニーへの提案材料としても非常に有効でした。
しかし2025年の今、状況は大きく変わっています。廃棄物管理を担うのは製造拠点だけではなく、全国に広がる営業所や小規模拠点も含まれます。わずかな量であっても産業廃棄物を排出する以上、マニフェスト発行は必須です。そのとき、かつて専任担当者を前提に設計されたシステムは「専門的すぎて扱いにくい」「拠点ごとに課金されて費用対効果が合わない」といった壁に突き当たり、一元化を妨げる要因になっているのです。
本稿では、廃棄物管理システムを見直すべきタイミングや観点を整理し、DX時代にふさわしい仕組みのあり方について考えていきます。
なぜ今、見直しが必要なのか
廃棄物管理システムの多くは10年以上前に開発されたものであり、定期的に大規模な改修が施されてきたわけではありません。この10年のITの進化はめざましい一方、システムは当時の設計思想を色濃く残しています。
見直しを検討すべきサインには以下のようなものがあります。
- 価格が見合っていない:拠点追加のたびに課金され、全社展開に踏み切れない。
- セットアップの負担:導入時に時間や手間がかかり、専門知識がないと運用が難しい。
- サポートが不十分:問い合わせ窓口の対応に不満が残る。
- 紙やExcelの残存:年に数回しか廃棄物が出ない営業所では紙に逆戻りする。
- ユーザビリティの不足:現場担当者には使いにくく、結局一部の人に業務が集中する。
- 対象範囲の制限:産業廃棄物以外が登録できず、データが不完全になる。
- 資源循環の視点が欠如:単にマニフェストを発行するだけで、データを活かしきれていない。
これらが複数当てはまるなら、刷新を検討する時期に来ているといえるでしょう。
DXの潮流と廃棄物管理のギャップ
他の業務領域に比べ、廃棄物管理はDXが進みにくい分野といわれています。その背景の一つに、日本ならではの産業構造があります。全国各地に中小規模の委託業者が存在し、地域の事情に合わせた対応を積み重ねてきた歴史があります。こうした地域密着型の運営は、きちんと廃棄物を処理し続けるうえで大きな役割を果たしてきました。一方で、必ずしもIT活用が事業の中心にあったわけではないため、デジタル化のスピードにばらつきが生じやすいという側面もあります。
今、廃棄物管理システムで集約されるデータは、実は非常に価値のある資産です。廃棄物の発生量や処理方法を分析すれば、リサイクルの可能性を探り、環境負荷低減策を考えることができます。今後ますます重要になるESG経営や環境データ開示の観点からも、廃棄物データの活用は避けて通れません。
ところが、従来型のシステムでは「入力までで役割が終わってしまい、データを分析や活用に結びつける視点が弱い」ケースも見られます。DX推進の本丸は「データの横断利用」と「全社での一元管理」です。目先の拠点最適にとどまっている限り、せっかくのデータも眠ったままになってしまいます。
これからの廃棄物管理システムに求められるもの
最新の廃棄物管理システムは「現場担当者にとって使いやすい」ことに加え、次のような機能や思想を持っていることが望まれます。
- 全社展開のしやすさ:拠点ごとの事情に合わせつつ、一元的に管理できる。
- 全廃棄物管理が可能:産業廃棄物以外も容易に登録・管理できる。
- クラウドベース:場所や端末を問わず利用可能で、セキュリティも担保。
- 資源循環への応用:廃棄物を「資源」として捉え、再利用の可能性を探る。
- 環境データ開示への対応:ESGレポートや統合報告書への活用を想定。
つまり、ゴールは「法令順守」と「業務効率化」だけではありません。全社的なデータ利活用を通じて、持続可能な経営や循環型社会に貢献できるかどうかが問われているのです。
まとめ
廃棄物管理システムは、かつては専任担当者が扱う特殊な領域でした。しかし今では、全社に関わる環境マネジメントの一部として位置づけられています。現在の体制を基盤に、より効率的で先を見据えた仕組みへと進化させていくことが求められる中で、既存の枠組みを活かすのか、新たなシステムや方法を取り入れるのかといった選択肢を柔軟に検討する姿勢が重要です。
数多くあるシステムの中でも、排出者の視点に立ち、全社展開とデータ活用を前提とした設計を持つものは多くありません。その選択肢のひとつが CBA wellfest です。業務効率化やコンプライアンス対応にとどまらず、廃棄物データを資源循環・環境経営の基盤に育てていく――。そんな未来を実現するために、今こそシステム見直しの一歩を踏み出すタイミングといえるでしょう。
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