グリーントランスフォーメーション(GX)とは何か?脱炭素を超えた企業の取り組みと考え方
近年、SDGsへの関心や日本政府のカーボンニュートラル宣言を背景に、「グリーントランスフォーメーション(GX)」が注目を集めています。GXは、温室効果ガス削減にとどまらず、経済や産業構造の変革を通じて持続可能な成長を目指す包括的な取り組みです。本記事では、GXの基本的な概念や国内政策の動向、企業や事業者がGXにどう向き合うべきかの考え方を整理します。
GXとは何か
日本では、2020年10月に政府が「2050年までのカーボンニュートラル」を宣言したことを契機に、GXへの関心が急速に高まりました。再生可能エネルギーの導入、産業構造の転換、デジタル技術活用など、多岐にわたる戦略を通じて、国際競争力の強化も目指されます。
GXが求められる背景
- 気候変動による影響
異常気象や河川の氾濫、熱波などの頻発化は、温暖化の影響を示す深刻な現象です。これらの環境リスクに対応することは、事業継続や地域経済の安定にも直結しており、GX推進の必要性を後押ししています。
- 政策的背景
政府は、2020年12月に「グリーン成長戦略」を策定し、重点14分野における成長戦略と支援策を提示しました。さらに、2022年の岸田政権による「新しい資本主義」の成長戦略の一環としてGXが位置づけられ、今後10年間で150兆円規模の投資が見込まれています。事業再構築補助金やものづくり補助金には「グリーン枠」が新設されるなど、企業のGX推進を後押しする制度も整備されています。
日本国内のGX推進体制
GX実行会議
GX実行会議は、温室効果ガス削減やクリーンエネルギーへの転換を議論する場で、2022年7月から定期開催されています。ロードマップでは、製造業の構造転換、再生可能エネルギーの主力電源化、資源循環などの項目が提示されています。
GXリーグ
GXリーグは、企業・官公庁・大学などが協働する場で、参加者は自社だけでなくサプライチェーン全体の排出削減を意識することが求められます。基本構想は「対話」「ルール形成」「自主的な排出量取引」の3つの柱で、国際競争力の強化と経済社会システムの変革を目指しています。
GXにどう向き合うか(企業・事業者の視点)
GXは広義であるため、施策の具体的内容は業界や事業内容によって異なります。重要なのは「何をやるか」の前に「どう考え、どの視点で着目するか」です。以下は、どの企業にも共通して役立つ思考のフレームです。
- エネルギーの視点
業務や設備でのエネルギー使用状況を把握し、再生可能エネルギー導入や省エネ化の余地を検討する。
- 産業・プロセスの視点
自社活動で環境負荷の大きい部分はどこか、サプライチェーン全体での影響も考える。
- デジタル・情報の視点
データやAIを活用して環境負荷を可視化し、効率化や改善策を検討する。
- 循環型社会の視点
資源の再利用、廃棄物削減、製品の長寿命化などを通じて価値創出の可能性を探る。
- ステークホルダー・地域との視点
取引先・地域・消費者を巻き込みながら、GX推進の方針や取り組みを設計する。
まとめ
GXは脱炭素にとどまらず、企業や社会の成長戦略そのものを変革する取り組みです。政策や支援策は日々進化しており、企業は業界や事業内容に応じて適切な優先順位を見極めることが求められます。
「GXをどう捉え、どの視点で向きあうか」という視点を大切にしながら、自社の事業やサプライチェーン全体で持続可能な成長を目指すことが、これからの企業に求められる姿勢と言えるでしょう。